『あゝ、荒野』のレビューが。

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    菅田将暉くんとヤン・イクチュンさんがW主演を務めた映画『あゝ、荒野』後篇のレビューを書いたところ、映画の公式アカウントと脚本を手掛けた港岳彦さんにリツイートしていただきました。なんだか褒められたようで、うれしい。


    【レビュー】『ビースト・オブ・ノー・ネーション』(15)−キャリー・ジョージ・フクナガが放つ衝撃の戦争ドラマ

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      ※多媒体に掲載するつもりでしたが、Netflix独占ということでボツになりました。なのでここで供養します(笑)

      「この世に確実なものはなく、何だって変わってしまう」

      ギャングと移民が織り成す残酷なドラマを描いた『闇の列車、光の旅』(09)や大ヒットドラマ『TRUE DETECTIVE/二人の刑事』で知られるキャリー・ジョージ・フクナガ監督の最新作で、第72回ベネチア国際映画祭でマルチェロ・マストロヤンニ賞に輝いた『ビースト・オブ・ノー・ネーション』は、西アフリカ某国の内戦下で家族を失った少年が、少年兵として育てられる姿を描いた衝撃作だ。本作は2005年に発表された同名小説を基にした作品で、動画配信サイトNetflixが初めて配給権を獲得した映画であり、本年の東京国際映画祭のパノラマ部門出品作品としても注目を浴びている。

      舞台は西アフリカ某国のとある村。主人公の少年アグー(エイブラハム・アタ)は、両親、兄、幼い弟妹、そして祖父と平穏に暮らしていたが、政府軍と反乱軍の間で内戦が勃発する。アグーは村に戦火が届く前に、母親、そして弟妹と共に首都へ避難することになるが、混乱の中で避難できたのは母と弟妹だけで、アグーは村に残ることになってしまう。そんなある日、とうとう村に政府軍が侵攻し、アグーたちは反乱軍と見做されて政府軍に拉致され、祖父と父が処刑されてしまう。兄と共に辛くも処刑を逃れたアグーだったが、その直後に兄も殺され、アグーは一人でジャングルに逃げ込む。あてもなく森を歩いていたアグーは、NDFと呼ばれる反乱軍に捕まってしまうのだが、その境遇を司令官(イドリス・エルバ)と呼ばれる男に見込まれ、少年兵として育てられることになり…

      監督・脚本を務めたフクナガ監督は、撮影監督の怪我によって自身でカメラも回すことになったが、何よりも困難を極めたのは資金集めだったという。通常、アメリカの映画会社は白人が主人公、少なくとも白人が出演する映画でなければ出資したがらない。なぜなら、白人が主人公でなければアメリカ国内でのヒットに結びつかないと考えているからだ。まして本作は内戦下の西アフリカ某国(※本作の撮影はガーナで行われたが、原作には舞台がナイジェリアではないかと示唆する描写がある)が舞台であり、白人は通行人として一瞬だけ映り込むだけ。そんな本作に出資した製作会社と配給権を獲得したNetflixには懐の深さを感じるとともに、ハリウッドにおける白人至上主義と黒人差別を再認識させられ、筆者自身は少し複雑な思いを抱いた。

      …司令官に少年兵として育てられたアグーは、初めての略奪ミッションで、初めての殺しをするよう命令される。「私は只の学生です」と命乞いをする青年を見つめるアグー。善悪の葛藤に苛まれるアグーに対して、「こいつはお前の親父さんを殺したんだ、殺せ!」と司令官はまくし立てる。「殺さなければ殺される」という極限状態にあるアグーの中で、何かが弾けた。青年の頭に向かって勢いよくナタを振り下ろしたアグーは、遂に罪のない青年を殺してしまう。画面に飛び散った血は、アグーが少年兵として完成され、善悪の境界を超えた野獣と化してしまったことを象徴している。

      そのアグーを育て上げる司令官を演じたのは、『パシフィック・リム』(13)や『マンデラ 自由への長い道』(13)などで知られるイドリス・エルバ。母親がガーナ出身であるエルバは、フクナガ監督と共に本作のプロデュースも手がけた。彼が演じる司令官は、少年兵たちに一切の有無を言わせない威厳に満ちており、銃弾が飛び交う戦闘地域を銃も持たずに闊歩して指揮する姿は異質な恐怖を感じさせる。少年兵たちを洗脳し、悪のカリスマとして君臨するその姿はまるで、アフリカ東部に位置するウガンダの反政府勢力「神の抵抗軍(LRA)」の指導者で、大量の少年兵を使ってゲリラ戦を展開している史上最悪の戦争犯罪人の一人、ジョゼフ・コニーのようだ。

      アメリカが製作する戦争映画では、リアリティを担保した作品として宣伝されていながら、多かれ少なかれ娯楽性が強調され、なおかつアメリカ=正義という「アメリカ主義」が組み込まれている作品が多い。それ故に、作品に込められた現実味が薄れてしまうケースも散見される。しかし、ゼロ年代の初頭まで、実際にシエラレオネやリベリアで内戦が頻発してきた西アフリカの某国で繰り広げられる「架空の内戦」を描いた本作には、アメリカ主義は勿論、娯楽性も皆無。だからこそ、本作には真に迫るものがある。目を背けたくなるような暴力の世界を徹底して描いているからこそ、戦争が如何に悲惨で、未来を託すべき子供が人々の未来を奪う戦争に加担することの悲しさが、鑑賞者に然と伝わる。

      製作上の様々な困難を抱え、はたまた撮影を行ったガーナではマラリアに感染するというアクシデントまでも乗り越えて本作を完成させたフクナガ監督には、大きな拍手を送りたい。紛れもない戦争映画の傑作が、また1つ誕生した。

      (文:岸豊)

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